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大阪地方裁判所 昭和44年(借チ)21号・昭44年(借チ)22号・昭44年(借チ)20号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【主文】第一(二〇号)

一、申立人川上芳一と相手方間の別紙目録記載の土地について同記載の賃貸借契約の借地条件を次のとおり変更する。

1 目的

堅固な建物の所有

2 期間

この裁判確定の月の翌月一日から三〇年

3 借賃

この裁判確定の月の翌月から一ヶ月金八、〇〇〇円

二、申立人川上芳一は相手方に対して金七三〇、〇〇〇円を支払え。

第二(二一号)

一、申立人有限会社日比甚商店と相手方間の別紙目録記載の土地について、B1記載の賃貸借契約の借地条件を次のとおり変更する。

1 目的

堅固な建物の所有

2 期間

この裁判確定の月の翌月一日から三〇年

3 借賃

この裁判確定の月の翌月から一ヶ月金八、〇〇〇円

二、申立人有限会社日比甚商店は、相手方に対し金七六〇、〇〇〇円を支払え。

第三(二二号)

一、申立人村井章と相手方間の別紙目録C記載の土地について、C1記載の賃貸借契約の借地条件を次のとおり変更する。

1 目的

堅固な建物の所有

2 期間

この裁判確定の月の翌月一日から三〇年

3 借賃

この裁判確定の月の翌月から一ヶ月金七、〇〇〇円

二、申立人村井章は相手方に対し、金六三〇、〇〇〇円を支払え

【決定理由】本件各申立の要旨は、別紙目録A、B、C記載の土地につき、防火地域の指定、附近の土地の利用状況の変化、その他の事情の変更により、現に借地権を設定するに於ては堅固の建物の所有を目的とすることを相当とするに至つたにもかかわらず、非堅固の建物の所有を目的とする借地契約の変更につき当事者間に協議が調はないので、別紙目録A、B、1又はB2、又はC2、記載の賃借権について、堅固の建物所有を目的とするものに借地条件の変更を求める、というにある。

そこで本件に於て、取調べた資料によると、

一、相手方羽間吉三は、昭和二一年頃、その頃土建業をしていた平松守行に対し、相手方所有の別紙目録記載の土地を、非堅固建物所有を目的とし、敷金、権利金を授受することなく、賃貸人の承諾なく賃借権譲渡及転貸を禁じ、相当の期間の地代の前払を受けて賃貸し、平松は昭和二二年頃、本件土地上に木造の一棟三戸の家屋を建築し、その頃北部分の家屋を日比甚吉(申立人有限会社日比甚商店代表者)に、南部分の家屋を黒田太平に、真中部分の家屋を西某に売却した。右黒田は昭和二五年頃申立人村井に対し右家屋を売渡し、右西は何時の頃か山崎幸市に、同人は昭和三六年に申立人川上に右家屋を売渡した。平松は右建物売買にあたり、借地権を譲渡したが、賃貸人である相手方の承諾をえていなかつたことや、平松は多少の期間の地代を前払していたため、右買主も平松も賃貸人との交渉をせずに、そのまま放置していた。昭和二五年頃、相手方はこれを知つた。その後、申立人有限会社日比甚商店、申立人村井、山崎幸市、その他の者は、相手方と互いに、幾度か、断続的に、賃借権譲渡の承諾或いは新たな賃借権について、交渉したがまとまらず、右申立人有限会社らは地代又は支払わず、昭和三五年に至つた。同年四月二九日(天皇誕生日)に相手方と山崎幸市との間で、双方誠意をつくして話合つた結果、急転して円満に、賃貸借契約が成立したのをきつかけに、新たに、同年五月、相手方と申立人有限会社日比甚商店との間に別紙目録B記載の土地につきB1記載の賃貸借が成立し、同年六月一四日公正証書を作成し、同年五月相手方と申立人村井との間に、別紙目録C記載の土地につきC1記載の賃貸借が成立し、昭和三六年二月九日公正証書を作成し、昭和三六年三月相手方と申立人川上との間に、別紙目録A記載の土地につき同記載の賃貸借が成立し、同年三月九日公正証書を作成した。(申立人有限会社日比甚商店、申立人村井の言う昭和二五年一月一日成立の賃貸借契約はこれを認めることができない。)

二、(一) 本件土地については、昭和一一年四月一八日、市街地建築物法にもとづき、甲種防火地区に指定せられ、昭和二五年一一月、建築基準法によつて指定された防火地域とみなされた。

(二) 本件土地については、昭和二六年一二月建築基準法による商業地域に指定された。

三、戦争末期には、本件土地及附近は、家屋が取毀されたり焼失したりしたが、戦後、徐々に復興した。本件土地は、野田阪神交さ点の北方約二五〇米、淀川大橋の南方約五〇〇米に位置し、国道二号線(古くから言う阪神国道)の東側に接して所在するのであつて大阪市から神戸、尼崎への通路にあたり、交通至便の土地であるため、経済の発展に伴い、昭和二〇年代、三〇年代、四〇年代と附近の土地の利用状況が変化してきていることが認められ現在大きく変化しつつある。今、仮に昭和二五年(相手方が土地の無断転貸を知つた頃)昭和三五年(新たに賃貸借が成立した頃)、昭和四五年(現在)を比べると右変化を容易に認めうると考える。昭和三五年中頃までは殆ど附近に存在しなかつた鉄筋コンクリート造の堅固な建物が昭和三〇年代の終頃から、かなり増加しており、商業活動のために使用される割合が更に高度となるという土地の使用の質的変化を来しているものと認める。

右のように附近の土地の利用状況が変化し、現に借地権を設定するに於ては、堅固の建物の所有を目的とすることを相当とするに至つたということができ、これを不相当とする事情は見当らないから申立人の本申立を認容すべきである。

四、次に借地条件の変更、財産上の給付等の附随条件については、賃貸借の存続期間をこの裁判確定の月の翌月一日から各三〇年と定め、借賃は、この裁判確定の月の翌月から申立人川上については一ヶ月金八、〇〇〇円、申立人有限会社日比甚商店については一ヶ月金八、〇〇〇円、申立人村井については一ヶ月金七、〇〇〇円と変更し、条件変更の承認料については、申立人川上は金七三万円、申立人有限会社日比甚商店は金七六万円、申立人村井は金六三万円を夫々相手方に支払うべきである。夫夫の根拠と計算方法は別紙の通りである。

尚申立人は、借地法の適用のある賃貸借であるとして本申立をしており、相手方は都市計画による区劃整理により国道二号線が拡げられるまでの一時使用の目的の賃貸借であり、仮にそうでないとしても公共事業等のため本件土地が収用又は使用される場合には、賃借人は賃貸人の請求に応じて異議なく土地を返還し、何らの請求をしない旨の特約がありこれによつて、昭和四四年四月一八日付答弁書と称する書面が申立人に送達された日に解除する旨述べるところ、当裁判所は、本件各賃貸借の契約時の昭和三五、六年に於て、少くとも換地予定地が判明しているにもかかわらず契約がなされていること、(公正証書にもその旨明記されており、このことは必ずしも目的土地の特定のためのみと考えることはできない)、そのような時期になされた契約に於て、存続期間を、とにかく二〇年と定めていること、その他特に、一時使用の目的のものと認めうべき資料もないことからみて、そのような目的の賃貸借とは考えない。又相手方のいう特約を有効とみても、右に述べた事情を併せ考えて右特約を見るとき、本件のように従前の土地と換地予定地とが大部分重なつている場合には、右特約にいう明渡すべき場合にはあたらないものと考える。従つて借地法の適用のある借地権が存在するものとみたいのである。(林繁)

目録 A

(目的土地の表示)

大阪市福島区海老江中一丁目三二、三三番地の宅地四〇、七六坪の内、宅地一四、一九坪、但し大阪市復興特別都市計画事業地区福島、工区中海老江、ブロック番号一六、符号八、地積三一、〇八坪の中、中央部分の宅地一〇、八二坪

(借地権の表示)

右土地につき結ばれた賃貸借

一、当事者 土地所有者賃貸人羽間吉三、賃借人川上芳一

二、契約日 昭和三六年三月

三、目的 非堅固な建物所有

四、期間の定 昭和三六年三月一日から二〇年

五、敷金二五万円、賃料月金二、二〇〇円毎月末日までにその月分を持参払する。

六、賃料増額、昭和三九年五月一日より月金二、七〇〇円、昭和四一年五月一日より月金二、九〇〇円、昭和四二年四月一日より月金三、一〇〇円

目録 B

(目的土地の表示)

大阪市福島区海老江中一丁目三二、三三番地の宅地四〇、七六坪の内、宅地一四、二二坪、但し大阪市復興特別都市計画事業、地区福島、工区中海老江、ブロック番号一六、符号八、地積三一、〇八坪の中北部分の宅地一〇、八四坪

(借地権の表示)(B、1)

右土地につき結ばれた賃貸借

一、当事者 土地所有者賃貸人羽間吉三、賃借人有限会社日比甚商店

二、契約日 昭和三五年五月

三、目的 非堅固な建物所有

四、期間の定 昭和三五年一月一日から二〇年

五、敷金二二万円、賃料月金二二〇〇円

毎月末日までにその月分を持参払する。

六、賃料増額、昭和三九年五月一日から月金二七〇〇円、昭和四一年五月一日から月金二九〇〇円、昭和四二年五月一日から月金三一〇〇円

(借地権の表示)(B、2)

右土地につき結ばれた賃貸借

一、当事者 右一の当事者と同じ

二、契約日 昭和二五年一月一日

三、目的、期間の定、敷金、賃料、賃料増額右三、四、五、六と同じ

目録 C

(目的土地の表示)

大阪市福島区海老江中一丁目三二、三三番地の宅地四〇、七六坪の内宅地一二、三五坪、但し大阪市復興特別都市計画事業、地区福島、工区海老江、ブロック番号一六、符号八、地積三一、〇八坪の中南部分の宅地九、四二坪

(借地権の表示)(C1)

右土地につき結ばれた賃貸借

一、当事者 土地所有者賃貸人羽間吉三、賃借人村井章

二、契約日 昭和三五年五月

三、目的 非堅固な建物所有

四、期間の定 昭和三五年一月一日から二〇年

五、敷金一九万円、賃料月金一九〇〇円、毎月末日までにその月分を持参払する。

六 賃料増額、昭和三九年五月一日から月金二三〇〇円、昭和四一年五月一日から月金二五〇〇円、昭和四二年四月一日から月金二六五〇円

(借地権の表示)(C2)

右土地につき結ばれた賃貸借

一、当事者、右一の当事者と同じ

二、契約日、昭和二五年一月一日

三、目的、期間の定、敷金、賃料、賃料増額右三、四、五、六と同じ

別紙

一 借地期間の伸長について

近時の建物についての経済的(物理的でない)耐用年数を標準とし、堅固建物について契約上定めうる最短期間の各三〇年に伸長する。

二 条件変更後の借賃について

(1) 申立人川上について

実質賃料年額五二、二〇〇円(契約賃料年額37200円(月3100円×12ヶ月)+敷金の運用益15000円(敷金250,000円×0.06)=52,200円

賃料三一〇〇円が決定された昭和四一年度における土地に賦課された公租年額は六〇七七円である。

実質賃料に占める公租の負担の割合は

6077/52.200=11.64%………………W1

実質賃料に占める公租以外の部分の割合は

88.36%…………………………W2

昭和四四年度の公租は九八二二円である。

昭和四二年度から昭和四四年度までの公租の上昇率は9822/6077=1.62…………J1

昭和四二年四月の本件土地の地価と昭和四四年一月の本件土地の地価の上昇率はほゞ

137/100……………………J2

以上を基礎にして本件土地の借賃の上昇率は、昭和四二年四月から昭和四五年一月まで次のように上昇していると見るべきである。

W1×J1+W2×J2=1.40

以上の借賃の上昇率から本件土地についての昭和四五年一月における借賃年額は52200円×1.40=73.080円とみることができる。

借地条件の変更により本件土地の利用効率が増加するので、この観点からみて、以上において算出した借賃に次の調整を加えた。

73080円×1.5=109.620円

以上の調整によつてえた借賃は年額実質賃料であるから、この額から既に授受されている敷金二五〇〇〇〇円の運用利回り6%を乗じた額を控除して得た額を月額に換算した。

(109620−15000)÷12=7885円≒8000

(2) 有限会社日比甚商店について

契約にあたり授受された敷金は二二〇、〇〇〇円である。昭和四二年五月当事者間に於て借賃三一〇〇円が約定された。昭和四二年度に於て本件土地に賦課された公租は年額六〇八九円である。

昭和四四年度に於て、本件土地に賦課される公租は九八四二円である。

以上の基礎数字を元にして(特に記載しない基礎数字は川上と同じ)申立人川上に用いた計算方法により計算し、賃料月額七七〇〇円(≒8000)を算出した。

(3) 申立人村井について

契約にあたり授受された敷金は一九〇、〇〇〇円である。

昭和四二年四月当事者間に於て、借賃二六五〇円が約定された。

昭和四二年度に於て本件土地に賦課された公租は年額五二九二円である。

昭和四四年度に於て本件土地に賦課される公租は八三五三円である。

以上の基礎数字を元にして(特に記載しない基礎数字は申立人川上と同じ)申立人川上に用いた計算方法により計算し、賃料月額六六〇〇円(≒7000)を算出した。

三 承諾料について

右のように借地条件を変更し、賃料を増額し、期間を延長すれば、

(1) 相手方(地主)について

イ、借地権の消滅の時期が遠ざかり、更地への復期の可能性が減少する。更新の回数が減り、更新料授受の回数が減少する(不利益)

ロ、建物買取請求権が行使された場合の負担が増大する。(不利益)

ハ、所有権と借地権との価格の割合に於て、前者が低下し後者が増大する(不利益)

ニ、賃料が増額される傾向がある(利益)

(2) 申立人(借地人)について

イ、上記地主の利益が不利益となり、不利益が利益となる。

ロ、朽廃に近い戦後バラック建の地上建物が建かえられその使用収益について合理性が得られる(利益)

ハ、申立人所有、或は貸借の隣接地の利用効率が増加する。

ことになるが、右の外前記認定の一切の事情を考慮し、各申立人は本件承諾料として下記の通り土地所有権価格の約一五%を地主である相手方に支払うのが相当であると認めた。

申立人川上は4,867,830円(占有地の更地価格)×0.15=730.174円≒730.000円

申立人有限会社日比甚商店は5,121,218円(占有地の更地価格)×0.15=768.182円≒760.000円

申立人村井は42,389933円(占有地の更地価格)×0.15=635,839円≒630,000円

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